メカノケミカル合成による難溶性π電子系の化学修飾

留学生氏名 : 髙木 周

(所属) : 京都大学高等研究院 iCeMS ・大学院工学研究科 深澤研究室 修士課程1年

期間 : 2022年7月19日〜30日

場所 : 北海道大学大学院工学研究院 伊藤肇研究室

私は京都大学深澤研究室で,ペンタフルバレンを鍵骨格とする化合物の合成と物性調査を行っています.ペンタフルバレンはフラーレンの部分骨格であり,5 員環に起因した還元に対する可逆性や多電子還元に対する堅牢性といった特性に興味が持たれています.一方で,その溶解性の悪さと特異な反応性から,合成は容易ではありません.そこで,不溶性化合物の変換反応に有用であるボールミルを用いた固相反応のテクニックを北海道大学伊藤研究室にて学ばせていただきました.伊藤肇先生は本年1月28日に本領域の第2回公開シンポジウムの招待講演を務められ,メカノケミカル合成に関する最新の成果を講演して下さりました.この講演をきっかけに共同研究の議論が始まり,今回の国内留学に至りました.

約10日間の滞在期間中に,伊藤研から報告されている固相反応による宮浦・石山ホウ素化反応の条件をもとに,ジブロモフルバレンのホウ素化の改善を試みました.ボールミルを用いた固相反応は,溶液条件とは異なるファクターも多く,ノウハウが必要となります.日々の実験のディスカッションを通して,固相条件における条件検討の考え方を教えていただきました.普段とは異なる環境でしたが,伊藤研の皆様に暖かく迎えていただいたことで,滞りなく実験を進めることが出来ました.また,研究室内でのディスカッションにも参加させていただき,大変刺激になりました.近日,深澤研にもボールミル装置が導入され,伊藤研で学んだノウハウを研究室内でも共有し,日々の合成の選択肢の一つとして今後も活用していく予定です.

今回快く受け入れてくださった伊藤先生,久保田先生,また国内留学の機会を設けて下さった深澤先生,高密度共役の科学の関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.

伊藤研の皆さんとのジンギスカンBBQの風景(十分な感染対策を講じて実施されました)