研究概要

ダイヤモンドは,シリコンを凌駕する電子移動度を示すなど,優れた電子材料です。これは炭素間σ結合の短さに由来しつつ,さらに短い炭素間π結合の本質的な卓越性をも明示しています。材料としての極限的性質を目指すならば,共役分子性物質の選択は必然であって,分子間空隙の極限的な縮小による「高密度共役」の実現こそが、破格の物性向上の鍵でもありましょう。本学術変革領域研究『高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ』では,有機化学に基づく分子性物質の設計・分子間空隙の制御・凝縮相における熱ゆらぎ抑制により,新しい分子間電子共役(=高密度共役)を達成することを目的としています。同時に,最先端の機能物性科学的評価手法により,得られた高密度共役物質の各種物性を明らかにしていきます。既存の材料を凌駕する優れた電子伝導やスピン輸送,特異な電子相関や局在状態に関わる未踏機能の実現を通じて,美しい式・論理を介した“X”-conjugationの学理の確立と普遍化を行うことを最終的な目標としています。

具体的な研究戦略として,①共役電子の最近接を実現する分子骨格の創製,②巧みな分子間相互作用による共役分子の高密度構造の達成,③熱ゆらぎの克服による電子・スピンの極限的非局在/局在化の検証と機能開拓,を挙げており,これらによって従来の分子性物質設計の概念変革を導きたいと考えています。有機化学・機能物質化学・物性物理学間のTranslational Researchにより,分子間共役の概念の昇華:新たな共役概念である”X”-conjugationの提案をもって,従来の電子共役:π共役の科学を共に変革しましょう。

本領域が提案する新しい物質のデザイン

運営ビジョン

分子間空隙にわたる
新しい電子共役の概念
“X”-Conjugation の実証・普遍化

本領域が提案する新しい物質のデザイン

A01 高密度共役のための分子創製と新しい共役概念の提唱

有機構造化学と有機合成化学における分子設計の独創性の高さと精密有機合成の力量を基盤とし、π共役分子極限的な近接化(<0.3 nm)により高密度共役を実現するとともに、電子の局在性を制御するための新規Π共役分子群を創成する。さらに、得られたπ共役分子の物性・機能を他班との連携により明らかにし、高密度共役の本質を解明することによりπ共役を超える新しい共役概念(“X”-conjugation)を提唱する。

A02 分子間相互作用のデザインによる高密度共役状態の固定化

分子間相互作用の適材適所配置による空隙デザインを基本理念とし、不対電子間相互作用・静電相互作用・カルコゲン結合・分散力など、あらゆる分子間相互作用の徹底的活用によって、分子どうしが異常に接近し、かつ強固に結び付けられた集合体を作り出す。これにより、共役系の形状・電子的性質を活かした高密度集積化を実現する。さらに、ナノ~メゾスケールでの高密度共役状態を達成し、特異な電子・光・力学機能を発現させる。

A03 高密度共役分子集積体における精密物性測定

独自の計測評価・素子形成・構造解析技術の開発を通じて、A01およびA02班により創製された高密度共役分子系が示す1)電気・2)光・3)磁気・4)構造物性を実験的に検証する。高密度共役分子系上に配置された軽い電子、重い電子の両方を対象とし、電気伝導度・電荷キャリア移動度・磁性・熱伝導率・電子相転移の迅速・包括評価と統合制御をもって、「高密度共役」概念の確立と変革のための核となる。

A04 高密度共役分子集積体の未踏機能

平衡・非平衡を問わず、考えうる最も高密度な共役状態を創り出し、それを凝縮相、あるいは界面に固定化する手法を開拓する。空間を電子で埋める究極の構造の創出から生まれる潜在機能を“視る“ための観測系・計測系(対象:電子相転移・物理量変換・非線形応答・自発的電流振動・巨大スイッチング・電流-スピン流変換)の構築を他班との連携により推し進める。