領域代表者
京都大学工学研究科
関 修平
新たに始まった「学術変革研究」、その発端となる最初の研究者集団として、「高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ」は2020年に発足しました。”The Structure of Scientific Revolution”を紐解くまでもなく、パラダイム・シフトの考え方が定着する過程で自然科学の道に進んだものにとって、“学術”を“変革”するという考え方は、その名の通りまさに腑に落ちるものでした。私たちがここで変革を目指す対象としての“Paradigm”は、物理・化学・物理化学の分野で日常的に用いられている、電子共役そのものです。分子性物質の中での電子共役は、点電荷とみなせる電子核の電荷と、それを取り巻く点電荷とみなせない電子のエネルギー利得として、極めて美しく完備なかたちで定義されているように見えます。一方で、従前の電子共役の範疇にとどまらない、点ではないポテンシャルによって定義される電子の広がりについての理解も進んできました。私たちはこの新しい電子共役:“X”-conjugationによって既成の電子共役概念の変革に挑みます。どのような驚くべき性質が見いだされるのか、それを楽しみにしつつ定量的に明らかにし、美しく簡潔な式によって表現するまでを目指しています。今から120年前に明確に定義された電子共役を、次の100年に向けて装いを新たにさせたい、それが本領域を構成するメンバーに共通した理念です。
領域代表者
京都大学工学研究科
関 修平